Hatch Technology NAGOYA

子どもたちの悩みを早期発見・早期対応したい!|実証開始までの道のり【活動報告】

Hatch Technology NAGOYA 課題提示型支援事業で進行中の、教育委員会事務局子ども応援課と株式会社ZIAIによる実証プロジェクト「子どもたちの悩みを早期発見・早期対応したい!」。

2025年12月1日より、名古屋市内の小学校・中学校・高等学校(計21校)で、生成AIを活用した相談システムの実証プロジェクトがスタートしました。 前回の活動報告では「どんなことができるのか」というプロジェクトの概要をお伝えしましたが、今回は「実証開始までにどんな準備をしてきたのか」、そのプロセスをお伝えします。

※前回の記事はこちら
名古屋市内の小中高校で実証プロジェクトを開始しました【活動報告】

「最新のAI技術」を、子どもたちが過ごす「学校」という場所に導入する。そのためには、開発する企業側と、現場を守る教育委員会側とで、何度も丁寧なすり合わせを行う必要がありました。今回は、その話し合いの中で特に重要だったポイントをご紹介します。

AIから「人」へ、どうバトンを渡すか

今回のプロジェクトで、私たちが最も時間をかけて話し合ったのが、AIと人間(スクールカウンセラー等の専門家)の役割分担についてです。

ZIAI社のシステムは、24時間いつでもAIが生徒の悩みを聞いてくれますが、AIだけで全ての悩みを解決できるわけではありません。特に心配なのが、リスクが高いと判断される生徒を、どうやって人間の支援につなぐか、という点でした。

■ どんな話し合いがあったのか

定例の打ち合わせでは、具体的な「つなぎ方(コーディネーション)」について議論を重ねました。 企業側からはシステムとして実現可能な流れが提案されましたが、一方で教育委員会側からは「先生やスクールカウンセラーは常に待機しているわけではない」「緊急時の連絡はどうするか」といった、現場ならではの現実的な課題が出されました。

■ 決まったこと

議論の末、今回は以下のような役割分担で進めることになりました。

AIの役割:あくまで「傾聴(話を聴くこと)」に徹する。診断や断定的なアドバイスはしない。
人へのバトンタッチ:会話の中で「リスクが高い」と判断された場合、AIが「相談室に行ってみよう」「電話相談があるよ」といったメッセージを表示し、生徒自身が次のアクションを起こせるよう背中を押す。

システムが自動的に通報するのではなく、生徒の気持ちを尊重しながら、必要な時には「人」というセーフティーネットへ案内する。そんな優しい仕組みを目指しました。

「技術のスピード」と「現場の安心」の間で

スタートアップ企業の持つ「スピード感」と、教育現場で何より大切にされる「公平性・安全性」。 立場の違う両者が一緒にプロジェクトを進める中で、当初は視点の違いを感じる場面もありました。実際の打ち合わせでも、「お互いの課題感の違いを改めて認識した」という言葉が出るなど、実証開始に向けて丁寧な認識合わせが進められました。

具体的には、次のような点で調整を行いました。

1. 「誰が相談したか」は残さない

「相談したことが誰かにバレたらどうしよう」。そんな不安があると、子どもたちは安心して使えません。 そこで、相談内容は一切記録に残さず、個人を特定できない(ログを保存しない)仕組みを徹底することにしました。技術的な分析のしやすさよりも、まずは生徒の安心感を最優先した形です。

2. 学校ごとの「伝え方」を大切に

システムを導入するだけでは、子どもたちには届きません。しかし、タブレットの活用状況や、生徒への連絡手段は学校によってさまざまです。 「全校集会で説明する時間をとるか」「チラシを配るだけでいいか」「タブレット上のアイコンはどうするか」。 一律のルールを押し付けるのではなく、それぞれの学校の事情に合わせて柔軟に対応できるよう、教育委員会の方々を中心に細やかな調整が行われました。

これからに向けて

こうした数ヶ月にわたる議論と準備を経て、現在、システムは大きなトラブルなく稼働しています。 当初心配されていた「AIが勝手に変な回答をしないか」「うまく相談窓口へつながらないのではないか」といった問題も、今のところ報告されていません。

現在は、実際に利用してくれた生徒たちのデータ(個人は特定されない統計データ)が集まり始めています。 3月の成果発表会では、これらのデータを振り返りながら、私たちが準備してきた仕組みが実際にどう機能しているのか、数字とあわせてお伝えします。