Hatch Technology NAGOYA

メタバース技術を活用し、効果的な防災啓発を実現!|港防災センターを視察、シナリオ検討会を行いました【活動報告】

Hatch Technology NAGOYA課題提示型支援事業では、現在8つの実証プロジェクトが進行中です。今回は、防災危機管理局 防災企画課と株式会社ビーライズが取り組む「メタバース技術を活用し、効果的な防災啓発を実現!」についてお伝えします。

実証背景

南海トラフ巨大地震などの大規模災害が懸念される名古屋市では、市民一人ひとりの防災意識の向上が急務です。しかし、従来の講演会やハザードマップの周知といった啓発活動はあるものの、「防災啓発がマンネリ化している」という課題を抱えています。

特に次世代を担う子どもたちに対し、「共助」、つまり「災害時の助け合い」の意識と具体的な行動変容を促すため、本プロジェクトでは、ビーライズが持つメタバース技術にカードゲームを組み合わせた「新しい防災サバイバルRPG」の開発を進めています。

子どもたちが「共助」を学ぶために

本プロジェクトの最大の特徴は、先進技術であるメタバースを単なる視聴覚体験にとどめることなく、「ゲーム」に「共助」の要素を取り入れることで、子どもの防災意識に対する行動変容を促す点にあります。

従来の防災教育でも、災害の恐ろしさを伝えるためにリアルな映像やVR体験が用いられることがありましたが、それだけではなかなか「自分ごと」にできないという課題がありました。

本プロジェクトでは、メタバース技術を活用し、「暗く、環境がまだ充分に整っていない避難所の様子」など現実の災害下に近い状況をトラウマにならない範囲で再現し、その空間に入ってもらうことで、防災を「自分ごと」として捉えることを促進します。さらに、このメタバース空間と併用して、物理的なカードゲームも活用しながら、子どもたちが協力し、議論し、ランダムに発生する困りごとを解決するという「ゲーム」の要素を組み込みます。これにより、知識のインプットだけでなく、「皆で助け合わないと災害を乗り越えられない」という共助の意識を、「楽しい体験」を通じて自然に学ぶことができます。

このように、「メタバースでの高い臨場感」と「ゲームでの協力・役割意識」を融合させることで、従来の啓発では難しかった、感情を伴う深い学びと具体的な行動変容を促すことを目指しています。

名古屋市港防災センターを視察

効果的な防災啓発コンテンツを開発するため、2025年10月8日に名古屋市港防災センターにて、プロジェクトメンバーである、防災企画課と株式会社ビーライズの担当者が集まり、センターの見学とシナリオ検討会議を対面で実施しました。

まずは、防災企画課から子どもたちを主な対象とした、名古屋市で既に行っている啓発活動のコンテンツについて説明されました。その中の一つ、防災ボードゲーム「LIFE」はプロジェクトのメンバーで実際にプレイして体験しました。

また、港防災センターでは、災害の実態を正しく知り、その対処法を体験することができます。メンバーも体験に参加し、体験型学習の意義について理解を深めました。港防災センターは、あらゆる世代の市民に向けて防災啓発を行っていますが、特に子どもの学習が深まるような展示の工夫を聞くこともできました。

視察後は、既存の啓発活動の課題共有や、港防災センターで体験したことを踏まえたゲームのシナリオ検討会を行いました。既に行っている啓発活動の成功事例と課題を共有したことで、ビーライズ側は、開発中のコンテンツが目指すべきゴール、すなわち「子どもたちが防災を「自分ごと」として捉えるための体験と、その後の行動変容を促す仕組み」をより具体的にイメージすることができました。また、熱い議論を交わしながら、防災の中でも特に「共助」が重要であることを改めて共有し、ゲームのシナリオの方向性を定めました。

本プロジェクトに向けた意気込みについて、株式会社ビーライズの小笠原さんは次のように語ってくださいました。

「私たちもこれまでVRなどのデジタル技術を活用した防災コンテンツの開発を行ってきましたが、「いかに自分ごととして捉えてもらうか」という点には常に課題を感じていました。今回の訪問を通して、体験と対話を通じて学ぶ防災の重要性を改めて実感するとともに、今後はテクノロジーの力を活かして、より多くの子ども、ご家族の方が自分自身の暮らしと結びつけて考えられるような新しい防災体験づくりに挑戦していきたいと思います。」

今後はまず、ゲームのテストバージョンを開発します。これまでの防災啓発では体験できなかったことや、メタバースを活用するからこそできること、本事業内で新たにチャレンジする要素を模索しながら、プロジェクト内でフィードバックと改善を繰り返した後、名古屋市の子どもたちに体験してもらう場を設ける予定です。

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