本市の上下水道管は高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化への対応や大規模災害への備えが急務となっています。上下水道局では毎年300件を超える工事を設計・発注しており、現状でも人手不足の課題を抱えていますが、今後、人口減少による本格的な労働力不足が到来すれば、状況はさらに深刻化します。そのため、将来を見据え、『限られた人数でも質を落とさずに業務を遂行できる仕組みづくり』が私たちの大きな課題となっています。
この課題を解決するため、上下水道局 配水設計課・下水設計課と株式会社KK Generation(以下、KKG)が連携し、AIを活用した業務効率化の実証プロジェクトに取り組んできました。本記事では、これまでの取り組みのまとめをお伝えします。
※これまでの本プロジェクトの活動については、以下の記事をご覧ください。
現地打合せを実施しました【活動報告】
プロジェクト検証の途中経過【活動報告】
「検図照査AI」をカスタマイズ
設計業務の要となる「照査業務(設計図や設計書に誤りがないかの確認)」は、職員の知識や経験に頼らざるを得ず、紙やPCを使って目視で丁寧に確認するため、膨大な時間が必要です。
今回、この照査業務の効率化を目的としてKKGが開発した「検図照査AI」を名古屋市上下水道局向けにカスタマイズしました。設計図(画像データ)や設計書(テキストデータ)をシステムにアップロードするだけで、管径ごとの延長や、消火栓・仕切弁の個数などの情報をAIが自動抽出し、書類間の不整合をスピーディーにチェックする仕組みを構築しました。

生成AI×AI-OCRと「現場ルールの学習」
本システムの強みは、生成AI(LLM)とAI-OCRを組み合わせた高度なデータ抽出技術にあります。上下水道局特有の「明文化されていない独自の表記ルール」を組み込むため、職員への丁寧なヒアリングを重ね、AIモデルを開発しました。
また、単にチェック結果を「OK/NG」で提示するだけでなく、不整合と判断した根拠(判断理由)もあわせて出力する仕様にこだわりました。これにより、最終的に人間が修正や確認を行う際の心理的・物理的な負担を大きく軽減する狙いがあります。

今回、下水道の小規模な工事を対象に、管の口径や延長など基本的な9項目について検証を行いました。その結果、ある1件のテストケースにおいて、熟練職員が目視で約350秒要していた照合作業を、開発したAIモデルは約35秒で完了させました。これは全体の平均速度ではなく、あくまで特定条件下での成果ですが、デジタル化された電子ファイルにおける「単純な突き合わせ作業」において、AIの高い処理能力を確認することができました。
メディア向け説明会を実施しました

2026年2月27日、メディア向けの説明会およびデモンストレーションを名古屋市役所にて実施しました。
当日はメディア関係者にお集まりいただき、まずは上下水道局の担当者から本市のインフラが抱える課題背景を説明しました。続いて、KKGの担当者から技術的なアプローチを解説し、実際の設計データを用いてシステムを動かすデモンストレーションを行いました。デモの後には、今回導入したAIの技術的な特徴や今後の展開などについて活発な質疑が行われ、本取り組みへの関心の高さが感じられました。
なお、本プロジェクトは、今回取材いただいた以下のメディアに掲載いただきました。
あわせてご覧ください。
【建通新聞】名市上下水道局 管路工事の設計図書照査でAI活用
【日本水道新聞】設計の照査効率化検証 名古屋市・KKG、独自AIモデルで
【日刊建設工業新聞】名古屋市上下水道局/AIで上下水道管データ照査効率化/庁内公募プロジェクトに採択
【建設通信新聞】上下水道管設計照査/AI活用で効率化/名古屋市が実証プロジェクトの説明会
【水道産業新聞】AIで設計の照査業務効率化を/KK Generationと実証/名古屋市上下水道局
本年度の成果発表会を開催します
本プロジェクトの最終的な成果と今後の展望については、2026年3月23日に開催する成果発表会でお伝えいたします。
名古屋市内で行われた先進技術実証プロジェクトを、教育、まちづくり、ヘルスケア、公共インフラ、市民サービスの5つのテーマに分けて発表します。また会場には、各社の開発した技術を展示するブースもご用意しています。ぜひ会場でご参加ください。
Hatch Technology NAGOYAを知らない方も、過去に参加した方も、お気軽にご参加ください。交流のお時間も用意していますので、実証企業の方々ともお話しいただけます。
ご参加をお待ちしております。



