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応対品質評価AIツール「Dr.Tel」による行政窓口の接遇可視化と「攻めのDX」の実現【実証レポート】

千種保健センター保健管理課は、株式会社スタジアムと連携し、応対品質評価AIツールを活用した窓口応対(接遇)の実証実験を行っています。 行政窓口における「接遇」は、これまで客観的な評価が難しく、担当職員の個人のスキルに委ねられがちでした。本プロジェクトでは、AIを用いて接遇を可視化・分析することで職員のスキルアップ、そして市民満足度の向上を目指す「攻めのDX」に挑戦しています。

プロジェクトの背景

行政窓口では、多様な市民の方々に対し、公平かつ丁寧な対応が求められます。しかし、対面で行われる業務の性質上、その質を客観的に評価することは極めて困難であり、改善のプロセスが不明確になりやすいという課題がありました。

こうした現状を解決するため、本プロジェクトでは、窓口での会話を録音し、株式会社スタジアムが提供する応対品質評価AIツール「Dr.Tel(ドクターテル)」を活用。従来の録音活用といえば、トラブル防止や記録保存といった「守り」の側面が強いものでしたが、今回、録音データをAIで解析し、職員のモチベーション向上とスキルアップにつなげる「攻めのDX」を目指しました。

※これまでの本プロジェクトの活動については、以下の記事をご覧ください。
現地視察を行いました【活動報告】
現場に合わせてAIの「評価ロジック」をチューニングしました【活動報告】

「見えない接遇」を数値化する「Dr.Tel」の仕組み

本プロジェクトの中核となる「Dr.Tel」は、従来可視化が難しかった「コミュニケーションの質」をデータとして可視化する応対品質評価AIツールです。 元々はコールセンター等の電話対応を解析するために開発されたシステムですが、その高度な解析能力を行政窓口へと応用しました。

最大の特徴は、「言語情報(話している内容)」と「非言語情報(声の印象)」の両面から接遇を科学的に分析できる点です。マイクで収録した音声を、音声認識・感情解析・生成AIを統合した独自のアルゴリズムで解析し、主に以下の機能で職員をサポートします。

声の印象」の解析: AIが「声の明るさ」「抑揚」「話す速度」などを微細に測定し、耳で聞くだけでは判別しづらい「声の表情」や「メリハリ」を数値化します。これにより、相手に好印象を与える話し方ができているかを客観的に判定します。

多角的なスコアリングと要約: 「クッション言葉」「感謝・お詫び」といった市民への配慮を図る観点から、「要望理解」「意思確認」など手続きを円滑に進めるにあたり重要となる観点まで、良質な接遇に必要な要素が含まれているかを自動判定し、5段階評価のレーダーチャートとして可視化します。また、会話の内容をAIが自動で要約するため、管理者は録音を聞き返さずとも対話の流れを把握できます。

モチベーションを高めるフィードバック: 解析結果は単なる点数表示にとどまりません。生成AIが「良かった点」や「具体的な改善アドバイス」を自然な文章で提示するため、職員は納得感を持ってスキルアップに取り組むことができます。

実証実験・現地見学会の様子

2026年1月22日、千種保健センターにてメディア向けの現地説明会を実施しました。当日は株式会社スタジアムによる技術の説明、実際の窓口の見学、また、千種保健センターの職員による窓口応対のフィードバックのデモンストレーションを行いました。

実際の録音データを解析した応対スコアや、AIによる評価コメントに基づき、フィードバックを行いました。 フィードバックを受けた現場の職員からは、AIが客観的な数値とともに良い点を評価してくれることに対し、以下のようなポジティブな反応が得られました。

「行政の仕事は普段なかなか褒められる機会がありません。AIにポジティブな面を見つけて評価されることで、非常にモチベーションが上がります」(千種保健センター職員)

このように、職員の心理的安全性を高め、自発的な成長を促すツールとしての可能性が示されました。

これまでの成果と課題

本プロジェクトでは、対面窓口特有の環境に合わせたAIロジックのチューニングを行いました。 全てを「声」だけで伝えるコールセンターとは異なり、実際の窓口では「身振り手振り」や「書類の指差し」、「表情」といった視覚情報が会話を補完します。そこで、音声だけで判断すると厳しくなりがちな評価基準を見直し、書類記入中の沈黙や、うなずきによる間などを許容するロジックへと調整しました。

また、減点方式ではなく「できたことを評価する」加点方式へのチューニングを行いました。AIが客観的な事実に基づいて「解決できたこと」や「良い対応」を提示することで、職員が自身の対応に自信を持ち、納得感を持って振り返りができる環境が整いつつあります。

一方で、実際のフィードバック運用を通じて、対面窓口ならではの課題も見えてきました。周囲の環境音やマイク距離の影響でAI解析に適さないデータも混在するため、現在は担当者が適切なデータを選定する必要があり、フィードバックのための準備に時間を要しています。 持続可能な運用に向けて、システム側で不適切なデータを自動除外する設定や、AI要約の精度向上による確認時間の短縮など、現場負担を最小限にするための試行錯誤を重ねています。

なお、本プロジェクトは以下のメディアにも掲載いただきました。あわせてご覧ください。

【建通新聞】名古屋市 窓口対応をAIで可視化 実証実験見学会開く
【中部経済新聞】名古屋市 窓口対応 AIで可視化 スタートアップと実証実験
【日本経済新聞】名古屋市の窓口応対、AIがカイゼン 言葉づかいや話す早さの質向上
【時事通信社】地方行政 第11438号 AIが接遇力講評─名古屋市(バックナンバー

本年度の成果発表会を開催します

名古屋市内で行われた先進技術実証プロジェクトを、教育、まちづくり、ヘルスケア、公共インフラ、市民サービスの5つのテーマに分けて発表します。また会場には、各社の開発した技術を展示するブースもご用意しています。ぜひ会場でご参加ください。

Hatch Technology NAGOYAを知らない方も、過去に参加した方も、お気軽にご参加ください。交流のお時間も用意していますので、実証企業の方々ともお話しいただけます。

ご参加をお待ちしております。