南海トラフ巨大地震の発生が懸念される中、「市民の防災意識の向上」が急務となっています。しかし、従来の講演会やハザードマップの配布といった啓発活動だけでは、特に子どもや若年層にとって「自分ごと」として捉えにくいという課題がありました。
こうした課題を解決するため、防災危機管理局と株式会社ビーライズが連携し、世界的なゲームプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」を活用した防災啓発の実証実験に取り組んでいます。
※これまでの本プロジェクトの活動については、以下の記事をご覧ください。
港防災センターを視察、シナリオ検討会を行いました【活動報告】
約40人の子どもたちと体験!新しい防災啓発ゲームのテストプレイを実施しました【活動報告】
今回は、2月3日に開催されたメディア向け説明会の様子をレポートします。

世界的ゲームプラットフォーム「Roblox」を活用した新しい防災啓発のカタチ
今回のプロジェクトでは、防災企画課と株式会社ビーライズが連携し「対話で進める避難所サバイバルRPG シェルタークエスト」を開発しました。
このゲームは、月間アクティブユーザー数が数億人とも言われるゲーミングプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」上に構築されています。日本の子どもたち、いわゆるZ世代・α世代にとっても非常に馴染み深いプラットフォームであり、特別な説明がなくても直感的に操作できる傾向があることが大きな特徴です。
「自分一人だけでは解決できない状況」が、必然的にリアルな対話を生む

このゲームシステムの最大の特徴は、メタバース空間での体験に「情報の非対称性」という要素を組み込んでいる点です。
通常のゲームでは、画面上のチュートリアルに従えば一人でクリアできることが多いですが、この避難所サバイバルRPGでは「自分一人では解決できない」状況があえて作られています。
参加者は「子ども」「大人」「高齢者」など異なる特性を持つ6種類のキャラクターから、ランダムに1つを選択してゲームに参加します。 避難所の備蓄倉庫を開けるには「鍵」が必要ですが、その鍵を持つことができるのは「大人のキャラクター」だけです。
実際の避難所でも同様に、子どもには倉庫の鍵を預けてはくれないでしょう。
もし子どものキャラクターを選んだ参加者が倉庫を開けたい場合、隣にいる他の参加者に「誰か鍵を持っていませんか?」「開けてくれませんか?」と現実空間で声をかけ、協力してもらう必要があります。
このように、「メタバース(仮想空間)内での役割と制約」を「現実世界での対話・対面コミュニケーション」とを連動させることで、災害時に不可欠な「共助(助け合い)」を自然な形で体験できる仕組みになっています。
メディア向け説明会・体験デモンストレーションの様子

2月3日に行われたメディア向けの説明会では、実際にタブレット端末を用いて、この「対話で進める避難所サバイバルRPG」のデモンストレーションが行われました。
参加者はタブレットを手に取り、ゲーム内の避難所(学校の体育館)にログインします。
画面上には「お腹が空いた」といった困りごとを抱えるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)が登場し、彼らを助けるためのミッションがスタートしました。
避難所での生活は、普段とは違うストレスがかかるものです。このゲームでは、プレイヤーが協力して困りごとを解決し、人々のストレスを少しでも軽減・減少させることを目指します。今回のデモプレイでは、「お腹をすいているキャラクターに、食料を届ける」というミッションに挑戦。「備蓄倉庫にビスケットがあるらしい」という情報を得た参加者たちでしたが、倉庫には鍵がかかっています。
「備蓄倉庫はどこにありますか?」
「体育館を出て左側にあるみたいです」
「鍵がかかってる! 誰か鍵を持っていませんか?」
「あ、私が持っています。今から開けに行きます!」
参加者同士が声を掛け合い、鍵役のプレイヤーが到着するのを待って倉庫を開錠。無事に備蓄倉庫からビスケットを手に入れ、困っているキャラクターに届けると、「ありがとう」という感謝の言葉とともに、そのキャラクターの頭上に表示されるストレスゲージが減少しました。
参加者からは、「ゲームの中だけでなく、リアルで対話をしないと進めない設計が面白い」「避難所では自分一人ではできないことがある、ということを擬似的に体験できた」といった声が聞かれました。
体験会を経て見えてきた成果
昨年12月に実施した子ども向け体験会でのアンケート結果では、体験者の約94%が「避難所ではみんなで助け合うことが大切だと感じた」と回答しており、楽しみながら防災意識を高めるという狙いは順調に達成されつつあります。
一方で、参加した小学生のほとんどがRobloxの操作に慣れており、操作説明の必要がなく、どんどんゲームを進めてしまう子どもも見られました。 当初想定していたよりも早くクリアしてしまうチームが続出したため、今回(2月)のバージョンではミッションの難易度やボリュームを調整。さらに学びや気づきを深める「協力要素」「協力を誘発する仕掛け」を強化した改良版となっています。
市の担当者は、今回の実証の意義について次のように語りました。
「学校教育の中で『自分の身を守る(自助)』や『行政が支援する(公助)』は教えやすいのですが、『共に助け合う(共助)』を教えるのは非常に難しいのが現状です。このゲームであれば、役割分担や協力の必要性を理屈ではなく体験として学べるため、非常に有効だと感じています」
まだ実証段階ですが、将来的には学校教育や地域の防災イベントなど、より広いフィールドでの活用も視野に入れながら、さらなるアップデートが進められる予定です。
なお、本プロジェクトは、今回取材いただいた以下のメディアに掲載いただきました。
あわせてご覧ください。
<掲載記事>
【建通新聞】 名古屋市 「共助」学ぶメタバースゲーム構築
【建設通信新聞】 仮想空間で防災啓発を実証/名古屋市 子どもたち向けにゲーム活用
【建設通信新聞】 メタバースゲームで共助の大切さを学ぶ/名古屋市が子ども向け防災啓発体験会



