Hatch Technology NAGOYA

2025年9月25日、Hatch Technology NAGOYA フィールド活用型支援事業のリアルイベント「Hatch Meets UP! 」の第3回目をMEET UP CHUBUと連携し開催しました【開催レポート】

Hatch Technology NAGOYA

第3回の「Hatch Meets UP!」では、過去実施した先進技術の社会実証の中から注目の企業4社をお招きし、自社技術の詳細や実証プロジェクトの概要・成果を紹介していただきました。
実証企業の当時の様子やその後の経過を多くの企業に届けたいと思い、『MEET UP CHUBU』と連携し、開催することになりました。

イベント概要

本イベントでは、まず名古屋市よりHatch Technology NAGOYAの事業概要が説明され、続いて同事業を通じて先進技術の実証実験を行った4社の企業が、具体的な取り組み、成果、および今後の連携ニーズについて発表しました。

Hatch Technology NAGOYA 事業紹介

名古屋市経済局次世代産業振興課の岸川より、先進技術社会実証支援事業「Hatch Technology NAGOYA」を紹介しました。

  • 事業コンセプトと目的: 「ハッチ(HATCH:孵化する)」をコンセプトに、先進技術の卵を社会実装につなげ、名古屋市経済の活性化を最終目標としています。
  • 事業の柱:
    1. 課題提示型事業: : 名古屋市側から行政課題や社会課題を提示し、事業者を公募する形式。負担金(最大300万円)とマネジメント支援を提供します。
    2. フィールド活用型事業: 企業側から技術の実証フィールドを行政施設などに求める形式。行政フィールドの提供、マッチング、マネジメントなどの伴走支援を提供します(負担金なし)。フィールド活用型は随時受付中です。

実証プロジェクト発表(4社ピッチ)

発表1:「LiDARとAIで実現する安全なエスカレーター利用」
    有限会社来栖川電算 創業者 兼 取締役
    山口 陽平 氏

● 課題と背景
高齢化に伴い、エスカレーター上での事故が深刻化しています。過去20年間で事故件数は2.7倍に急増しており、特に交通機関での発生が多く見られます。これらの事故の主な原因は「乗り方不良」による転倒事故であり、設備をすぐに更新・停止することが難しいため、利用者の乗り方そのものを改善する必要が喫緊の課題となっています。

● 実証成果
この課題に対しAIを搭載したセンサーシステム「エスカレーター見守り君」を開発し、名古屋市内で約半年間の実証実験を行いました。
このシステムは、LiDARセンサーから得られる3次元データをAIで解析し、利用者の動きを正確に検知・追跡します。
実証の結果、「エスカレーター見守り君」による利用者数や歩行者のカウント性能について、人による業務と比較して圧倒的な正確性が証明されました。さらに、システムが音声で啓発を行うことで、エスカレーター上を歩く人の数を約半分に減らすことに成功。片側乗車の偏りも改善し、輸送効率を維持しながら安全性を大幅に高められることが示されました。

● 求める連携
 ・工事やインフラノウハウを持つ企業
 ・鉄道事業者や自治体への営業・販路拡大を担える企業
 ・自治体と交通事業者間の費用負担など、官民連携における制度設計に協力できる人材
 ・駅構内の声掛け業務や、空港、スーパーマーケットなどエスカレーター以外の応用分野への展開パートナー

発表2:「送電設備へのドローン活用とAI異常検知による保全高度化」
    中部電力パワーグリッド株式会社 エンジニアリングセンターコンサルティンググループ 課長 
    林 太矩馬 氏

● ドローンを活用した社内課題の解決
送電線設備の点検における人員と時間の課題解決に取り組みました。従来、鉄塔に登って行う点検作業は5名の人員と240分を要していましたが、ドローンを導入することで、これを2名で40分に短縮し、作業効率を大幅に向上させました。

● 保有するドローン技術と活用事例
初期の手動操縦における画角のズレといった課題を解消するため、ドローン自動飛行・自動撮影技術を開発。これにより、電線が常に画面中央に捉えられた均質な画像を取得できるようになりました。この均質な画像データはAIによる解析に適しており、サビや損傷などの異常検知の精度向上に繋がります。
また、上記のドローン技術を貯水湖の法面の巡視に応用する、大型ドローンを用いて道路が整備されていない山に設置された鉄塔へ資材を運搬する、など各種ドローンの活用事例を積み重ねています。

● Hatch実証実験での運搬応用
Hatch Technology NAGOYAにおける実証実験では、産業廃棄物処理業のアビズ社と連携し、屋外向けのドローン運搬技術を屋内(工場内)に適用する検証を行いました。その結果、人海戦術で1時間かかっていた重量物の運搬作業を、ドローンによってわずか3分で完了できることを示し、運搬分野での省力化と経済性を実証しました。

● 求める連携
送電設備の点検で培った豊富なドローン技術とリソースを、さらに幅広い分野で活用したいと考えています。
 ・あらゆるインフラを所有する企業との連携
 ・ドローンを活用した異常発見を完全に自動化するための技術開発パートナー

発表3:「AR/MRグラスで実現する次世代現場ソリューション」
    イクスアール株式会社 代表取締役
    蟹江 真 氏

● 事業内容とHatch実証実験への取り組み
AR/VR(XR)技術を活用した可視化、シミュレーション、トレーニングソリューションの開発を行っています。危険を伴う連携トレーニングや、作業手順を空間上に表示するARマニュアルなど、現場の効率化と安全確保に貢献しています。

Hatch Technology NAGOYAにおける実証実験では、過去と現在で異なるテーマに取り組んでいます。
・過去の取り組み(南部市場)
 現場に合わせたARマニュアルを開発し、未経験の職員でもグラスを通して日常点検の手順を確認しながら訓練できるシステムを構築しました。

・現在の取り組み(久屋大通公園)
 カメラ映像の解析により、久屋大通公園内シバフヒロバの芝生の健康状態を細かく管理するソリューションを開発中です。芝生の状況を、ARグラスやスマートフォンを用いて見える化することで、イベント管理者や公園管理者が芝生の生育状況に応じた適切な対応を取れるようにすることを目指しています。

● 他の実証実験の事例
「なごやまちなか実証」では、VRゴーグルを装着して実際の建物内を歩き、火災発生時の煙や防火扉の閉鎖といった状況をリアルに体験できる避難訓練を実施。これにより、従来の訓練よりも危機意識を高めることができ、「とても効果的でリアル」という高い評価を得ました。

● 今後の技術展開
AR/MRグラスの技術的課題(ヘルメットとの併用、視野角など)を克服するため、今後は進化するスマートグラスや、AIを活用した動画マニュアルの自動作成(多言語化・字幕付与など)技術の導入を進め、ソリューションをさらに強化していく方針です。

発表4:「サーマルカメラを用いた人物追跡による行動状況の把握」
    株式会社インテージテクノスフィア 事業シナジーセンター データアーキテクトグループ マネージャー
    根本 学 氏

● 課題とアプローチ
倉庫や工場における夜間監視の分野では、金属盗難防止などの目的で監視カメラの導入が進んでいます。しかし、従来のカメラでは十分な撮影のために照明が必要であり、その電気代や光害による環境負荷が課題となっていました。
この課題を解決するため光を必要としない、人から発せられる熱(赤外線)を感知するサーマルカメラを用いた不審者検知システムの実証実験を行いました。

● 不審行動の定義と実験の結果
この実証実験では、不審行動を以下の3つに定義し、AIによる検知精度を検証しました。
定義された不審行動 実証実験結果
5秒以上の立ち止まり ほぼ100%の精度で検知に成功。
15秒以上の長時間滞在 ほぼ100%の精度で検知に成功。
移動経路が外れ値(通常と違う動き) 短時間の変則的な動きの検知に課題が残ったが、誤検知はゼロ。特に「立ち止まり」と「長時間滞在」については、サーマルカメラの映像でも人物の軌跡(トラッキング)を正確に追跡できることが証明されました。また、「移動経路の外れ値」の検知については、短時間の行動に対する精度向上という課題は残ったものの、正常な行動を誤って不審と判定する「誤検知」が発生しなかった点は大きな成果となりました。

● 今後の展望
今後は、単なる滞在時間の検知だけでなく、人の姿勢や動きから「しゃがむ」「物を拾う」などの具体的な行動を解析する技術開発を進めていく方針です。さらに、白黒で情報が少ないサーマルカメラの映像から、「性別」や「年代」といった属性を推定する技術にも取り組み、防犯・監視システムの機能向上を目指します。

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行政施設等をフィールドに、先進技術の実証実験に取り組まれている企業をご紹介することができ、結果として普段とは異なる参加者層の皆さまにも多くご覧いただく機会となりました。

本件をきっかけに、早速事務局との面談を申し込まれた方もいらっしゃいましたので、今後も、こうした実証実験を経た具体的なお話をご紹介できる機会を提供していければと考えています。

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今後のご案内

◆第4回 Hatch Meets UP!
 開催日:第4回:2025年12月9日(火)を予定
 開催場所:ナゴヤイノベーターズガレージ
 内容:検討中
 ※現在イベントページを作成中です。

 Hatch Technology NAGOYA事務局は、今後も企業等の皆様と行政双方にメリットのあるマッチングを実現し、先進技術の社会実装を進めてまいります。
 次回以降もテーマを設けて開催する予定です。ぜひご参加ください!