総務局 安全衛生課 × Zero To Infinity株式会社
成果報告レポート

1. プロジェクトの背景・課題
名古屋市では、職員のメンタルヘルス不調の対策として、ストレスチェックの実施や相談体制の整備を進めてきました。しかし、ストレスは目に見えず自覚できていない職員も多く、そうした従来の取組みだけでは、セルフケアに自発的に取り組んでもらうことは難しく苦慮しているといった課題がありました。

また、メンタル不調の兆候に気づくタイミングが遅れることで、対応が後手に回るケースも見受けられました。産業保健スタッフにとっても、事後的な対応では限界があるため、より早期に“気づき”を促す仕組みが必要でした。
こうした背景から本実証ではAI技術を活用し、職員自身が日々の状態を手軽に確認できる「ストレスのセルフチェックツール」の導入可能性について検証することとしました。
2. 社会実証の内容
実証を行ったのは、AIテクノロジーを用いたメンタルヘルス支援に取り組むZero To Infinity株式会社です。今回の実証では、同社が開発したストレスセルフチェックツール「HaCha」を用い、スマートフォンやPCのカメラを通じて表情・姿勢・声のトーンを解析し、ストレス状態を推定する仕組みを導入しました。

実施期間中、職員が1日1回1分程度のチェックを行い、そのデータをAIが解析。本人にスコアとしてフィードバックされることで、職員が自らの状態を客観的に把握できるようにしました。
チェック結果は個人にのみ通知される形とし、プライバシーを確保した上で運用しました。

3. 検証結果・効果
今回の実証では、「AIによるストレスセルフチェックが、職員の自分のストレスへの気づきを促す仕組みとして有効に機能するか」を確認することを目的としました。そのために、セルフチェックツールの活用状況と主観的なフィードバック、さらに実際の行動変容の有無などを多面的に評価検証しました。
具体的には、実際にツールを使用した職員からアンケートやヒアリングを通じてフィードバックを得ました。その結果として、「短時間で使いやすく、継続しやすい」「自分の状態に客観的に気づくきっかけになった」といった声が多く寄せられました。


セルフチェックのデータが蓄積することにより、職員全体の曜日別や時間帯別の傾向も把握でき、特に週初や繁忙期にストレススコアが上昇する傾向が見られるなど、組織全体の状態を可視化する足がかりも得られました。こうした結果から、AIを使ったストレスチェックは、単なる個人支援に留まらず、集団的な傾向把握にも繋げられる可能性があると評価しました。
4. 今後の展望・課題
今回の実証で、AIによるストレスセルフチェックが職員のメンタルヘルス支援において有効なツールとなり得ることを確認することができました。今後は、属性別の傾向分析を踏まえたフィードバックの提供、ツールのUI向上による継続的な利用促進など、導入に向けた検討を進めていきます。

さらに個人のPC(自席)で利用できることや、AIによる判定結果のさらなる精度向上についても課題として改善が必要なことも分かりました。
5. 実証事業者について
Zero To Infinity 株式会社
代表取締役 佐川亜希
設立 令和元年2月4 日
本社所在地 東京都新宿区新宿二丁目 12 番 13 号 新宿アントレサロンビル 2 階