Hatch Technology NAGOYAの課題提示型支援事業で進行中の「美しい緑を未来へ!持続可能な芝生ソリューション」プロジェクト。本プロジェクトでは、イクスアール株式会社がAIとXR技術を活用し、ヒサヤオオドオリパークの「シバフヒロバ」にある芝生の健康状態を可視化する『デジタル健康マップ』の開発に取り組んでいます。
今回は2026年2月10日に開催したメディア向け説明会と、ヒサヤマーケットでの一般体験会の様子をお届けします。
※XR:AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)など、現実世界と仮想世界を融合させる技術の総称
※これまでの本プロジェクトの活動については、以下の記事をご覧ください。
芝生管理の「デジタル健康マップ」が始動【活動報告】
芝生管理者と芝生の「デジタル健康マップ」の活用方法を協議しました【活動報告】
なぜ負荷の「可視化」が必要なのか?
シバフヒロバは、全国でも珍しい常時開放型の天然芝広場であり、市民の憩いの場であると同時に、多くのイベント会場としても活用されています。しかしながら、シバフヒロバを多くの人が行き交うことで、芝生にかかる踏圧(人が踏む圧力)が重なり、これが芝生にとって大きな負荷となっています。
芝生管理の専門家がきめ細やかなケアを行っていますが、踏圧による芝生へのダメージがすぐ見た目に現れるとは限らないため、専門家でも正確な負荷の蓄積を把握するのが困難でした。この「見えない負荷」をデータで捉えようとするのが、本プロジェクトの核となる試みです。
メディア向け説明会:発表された「3つの核心技術」
当日、FabCafe Nagoyaで行われた説明会には、メディア関係者に加え、日頃から公園の維持を担う公園管理者や芝生管理の専門家などの関係者が参加しました。
イクスアール株式会社より技術のポイントが以下の3つのステップで詳しく解説されました。
1. 現実データのセンシングと負荷の数値化
まず、公園内の固定カメラ映像を用いて、訪れた人の動きをAIで解析します。ここでは「GPSを使わない屋内位置情報把握システム」を屋外に応用するという、同社ならではの高度な技術が使われています。
単なる人数カウントではなく、芝生への負荷をより正確に測るため、独自の指標「踏圧影響指数(PIIスコア)」を導入 。「靴の面積」「滞在時間」「行動の種類」「動きの有無(すり切れ)」の4要素から算出されますが、特に「荷重よりも、人の動きによる『すり切れ』の影響が大きい」という専門家の知見が計算式のベースとなっています。
2. データの統合と可視化
次に、解析した膨大なデータを3m四方のグリッドごとに集計し、管理しやすい「デジタル健康マップ」へと統合します。
負荷が高い場所は「赤色」、低い場所は「緑色」のヒートマップとして表示。地理情報システム(GIS)と連動させることで、どのエリアに重点的なケア(肥料散布や養生)が必要かを、誰でも直感的に特定できるようになりました。
3. 実空間への投影(デモンストレーション)
説明会の目玉となったのが、XRを用いたデモンストレーションです。
統合されたデータは、スマートフォンやタブレットのWebARアプリ、あるいはMRゴーグルを通じて、目の前の芝生の上に直接重ね合わせて表示されます。参加者がデバイスをかざすと、実際の風景の中にヒートマップが浮かび上がり、「今、足元の芝生がどれくらい疲れているか」をリアルタイムで体感することができました。


一般体験会:ヒサヤマーケットでの市民体験
説明会に続き、園内のマルシェ「ヒサヤマーケット」では特設ブースを設置し、一般の来園者にもXR体験を開放しました。
市民の皆さまにも、XRを使った踏圧の可視化を体験いただきました。どのエリアに人が集中し、芝生に負荷がかかっているのかを視覚的に確認してもらうことで、芝生保護の重要性をリアルに実感していただく機会となりました。
体験後の簡単なアンケートを通じて集まったフィードバックを、今後のシステムの最終調整や、活用方法の検討に役立ててまいります。


今後の展開
今後は、外部のオープンデータや仮想シミュレーションを活用し、シバフヒロバの日照条件を分析する予定です。太陽の位置と光の向きを計算し、周辺の建物が落とす影の影響を可視化することで、日照不足による芝生の生育不良リスクが予測可能か検証し、デジタル健康マップに反映させていきます。
なお、本プロジェクトは、今回取材いただいた以下のメディアに掲載いただきました。
あわせてご覧ください。
【建通新聞】名古屋市 芝生の負荷を可視化 現地見学会開く
【建設通信新聞】芝生踏圧ダメージ/AIとXRで解析/名古屋市、Hatch NAGOYA実証実験
【中部経済新聞】VR技術のイクスアール 芝生管理にデジタル技術 空間情報とAI組み合わせ
【日本経済新聞】名古屋市、久屋大通の芝生「青々」と AIとXR使い緑とにぎわい両立
本年度の成果発表会を開催します
名古屋市内で行われた先進技術実証プロジェクトを、教育、まちづくり、ヘルスケア、公共インフラ、市民サービスの5つのテーマに分けて発表します。また会場には、各社の開発した技術を展示するブースもご用意しています。ぜひ会場でご参加ください。
Hatch Technology NAGOYAを知らない方も、過去に参加した方も、お気軽にご参加ください。交流のお時間も用意していますので、実証企業の方々ともお話しいただけます。
ご参加をお待ちしております。



