取り組んでいる課題
直したいが、客観的なデータを示せない
道路の区画線(白線や黄線)は日々劣化しますが、広大な道路網をすべて目視で確認し管理することには限界があります。従来はパトロールや通報に頼って補修を行ってきましたが、自動運転技術の発展などにより区画線の重要性が増す中、「客観的データに基づいた定量的な評価と修繕」が課題となっています。
全体の総延長や劣化割合といった正確なデータがなければ、効率的な修繕計画を立てることはできません。そのため、従来の目視頼りの管理から脱却し、データに基づいた新たな区画線の管理を確立することが急務となっています。
これまでに行ってきたこと
行政が走って集め、民間がAIで解く
この難題に対し、市(緑政土木局道路維持課)と民間企業(株式会社スマートシティ技術研究所・ニチレキ株式会社)は、役割を分担し、課題解決に取り組んでいます。
Step 1:まずは市内管理道路のデータを集める
まず動いたのは、道路維持課です。データがないなら、自分たちで集めるしかないということで、 日常業務で使用するパトロールカーにスマートフォンを設置し、市内管理道路を走り回り、路面の画像データを取得しました。
Step 2:集めた画像を分析する
こうして集められた膨大な画像データを受け取ったのが、今回の実証実験のパートナーであるスマートシティ技術研究所とニチレキのチームです。 彼らのミッションは、「画像データから区画線の『有無』(及びかすれ箇所)と『長さ(総延長)、かすれ延長』をAIで割り出すこと」。
しかし、ここで開発チームは最大の壁にぶつかります。それは、「どの程度かすれている区画線をなしとするか」という基準の問題と、その基準をもとに「区画線の長さをどうしたら正確に計測できるか」という技術の問題です。
前者の「基準」については、明確な正解があるわけではありません。そのため、現場職員の感覚とAIの判定結果をすり合わせながら、納得できるラインを探る作業が必要でした。後者の「技術」については、画像分析AIを高度にチューニングし、誤差を可能な限り減らす必要がありました。
Step 3:どこまで消えたら“なし”なのか?
くっきりと引かれた白線をAIが認識するのは比較的簡単です。しかし、現場の道路はもっと複雑で、タイヤですり減って途切れ途切れになった道もあれば、すり減ってなくなったのではなく元々区画線がない道もあります。
人間なら「これは白線である」「これはもう消えている」と感覚で判断できることでも、AIには「ここまでならOK、ここからはNG」という明確な「閾値(=合格ライン)」を数字で設定しなければなりません。この基準がズレると、算出されるデータの信頼性がなくなってしまいます。
この難題を乗り越えるため、開発チームは行政の実務担当者と議論を重ね、現場の「感覚」をAIが分かる「ルール・定義」へと落とし込んでいきました。 さらに、その定義をAIに正確に教え込むため、当初の想定を超える4万枚以上の教師画像を作成し、管理者の評価基準に合わせてチューニングを繰り返すことで、現場の実態に即した精度の高いAIを構築していきました。

▲写真左:教師画像の作成、写真右:画像解析のチューニング
今後の期待
現在、プロジェクトは折り返し地点を過ぎ、AIは複雑な路面状況からも区画線を識別できるようになりつつあります。
このまま順調に進めば、以下の成果が期待されます。
- 3つの区画線の有無の判定:
今回の実証実験では、「白い実線」「白い破線」「黄色の実線」という3種類の区画線をAIが識別できるかを検証してきました。精度の検証はこれからですが、現在開発したシステムでは、これら3種類すべてを見分け、それぞれの「長さ(延長)(健全箇所の延長及びかすれ延長)」を計測できるようになっています。
2026年春の最終成果に向け、プロジェクトチームは現在もAIの精度向上と実用化に向けた検証を続けていますので、続報をご期待ください。



