株式会社インテージテクノスフィア×株式会社インテージホールディングス×株式会社アビヅ
成果報告レポート
1. プロジェクトの背景・課題
本プロジェクトでは、資材盗難、特に近年増加傾向にある、太陽光発電所等での金属盗難に対して不審者の検知を行う事を目的とします。(参考:警察庁「金属盗 対策に関する検討会報告書」)
夜間に発生する事が多く、一般的な監視カメラの場合は夜間の監視に光が必要となり、電気代コストおよび環境負荷も大きくなると考えられるため本プロジェクトでは光を必要としないサーマルカメラを活用した不審者検知を目指す事にしました。
単に人物を検知するだけでなく、経路分析を行う事で不審者のみを適切に検知するシステムの技術開発に取り組みました。
2. 社会実証の内容
今回の実証は、25年1月にアビヅ社の工場にて撮影を行いました。
それらのサーマルカメラ映像に対して、人物の検出およびトラッキングを行うAIを開発し、立ち止まりの有無や移動経路から不審者検知を行いました。
具体的には不審者の定義を決め、一つ以上当てはまる場合を不審者とし、以下処理によって、移動経路の判定を実施しました。
1. 以下データセットに対して、ユークリッド距離を用いたDTW(Dynamic Time Warping)による軌跡同士の距離(類似度)を算出
2. 1.で求めた軌跡同士の距離に対して階層的クラスタリングを行い、2クラスに分類
3. 少数クラスの軌跡は不審者と判定
技術的にはエッジAI開発の知見を活かし、小型のエッジ端末で動作するAIモデルを開発しました。
その過程で基本的なコードはLLM(Large Language Model)の活用して効率化を図り、独自の人流解析技術を活用しております。

3. 検証結果・効果
まず、KPIとして不審者侵入シーンで見逃し率が0%であること、不審者の誤検知率が30%未満で あることを目標としました。
立ち止まりおよび滞在による不審者判定に関しては、見逃し率と誤検知率ともに目標の精度を達成しました。しかし、移動経路による不審者判定については、見逃し率が22.2%となり、目標の精度を達成することができませんでした。
人物の検出およびトラッキングは高い精度で解析できており、立ち止まりと長時間滞在を検知することができています。一方で身体の一部または全部が障害物に隠れる場合等のシーンでは更なる検証が必要と考えられる結果となりました。
また、不審者を見逃してしまったケースに対しては、平均滞在時間が短いデータだけで再度移動軌跡クラスタリングを実施する等、工夫が必要と確認できました。

4. 今後の展望・課題
今後は、不審者の行動を考慮することで、より粒度の細かい不審者判定を可能にしたいと考えております。(例:しゃがんで移動している、ものを蹴っている)
また、サーマルカメラ映像から骨格や姿勢を推定することが可能かどうか、属性(性別・年齢)推定が可能かどうかを技術調査・検証を検討していきます。
また、それらを社会実装できる精度で実現できた場合には、本PJで想定した工場等の施設以外にも、様々な場面で応用していければと考えております。
ただし、サーマルカメラ映像では色情報が取得できない事から、属性推定のための情報が少なく、精度が低くなってしまう課題が残るため、より高画質なサーマルカメラの活用、画像生成AIを用いたサーマルカメラ画像からの可視光画像生成等の方法を検討しております。
5. 実証事業者について
事業者:株式会社インテージテクノスフィア
代表者:酒井 和子
住所:〒188-0001 東京都西東京市谷戸町2-14-11
URL:https://www.intage-technosphere.co.jp/company/corporate-data/
事業者:株式会社インテージホールディングス
代表者:仁司 与志矢
住所:東京都千代田区神田練塀町3番地 インテージ秋葉原ビル
URL:https://www.intageholdings.co.jp/company/profile/
フィールド提供者:株式会社アビヅ
代表者:瀬田 大
住所:〒455-0026 愛知県名古屋市港区昭和町14-24
URL:https://www.arbiz.co.jp/about/