Hatch Technology NAGOYA

生成AIと音環境分析を用いたマッチングシステムの検証【成果報告】

国立大学法人名古屋工業大学 白松研究室×ハイラブル株式会社×経済局次世代産業振興課(ワークショップ「Hatch Meets UP!」)
成果報告レポート

1. プロジェクトの背景・課題 

本プロジェクトでは、地域の課題解決に向けて行われるワークショップやイベントの対話の中から、実際の「協業の可能性」を抽出し、それを具体的なアクションに変換する支援システムの構築を目的としています。特に、さまざまな立場の参加者が集まるネットワーキングイベントにおいては、対話の中に多くの暗黙知が埋もれており、それらを構造化して可視化することが求められます。こうした課題意識のもと、従来の可視化だけでなく、参加者同士のマッチングを支援する新たな技術開発に取り組みました。 

2. 社会実証の内容 

今回の実証は、7月に行われたHatch Meets UP!のイベント中の議論音声を、卵型のマイクアレイで収録し、音声認識(Whisper)と生成AI(Anthropic社のClaude)を用いて文字起こしと要約を実施。そこから各参加者の「リソース」「スキル」「課題感」「実現したいこと」などの情報を抽出し、それをもとに協業の可能性を自動で推薦する仕組みを開発しました。 

また、チャット形式のインターフェースを備え、ユーザーが「こういうテーマで実証したい」と入力すると、関連する企業や団体、KPIやスケジュール案までをAIが提示する設計としています。さらに、音声ベースでも同様の推薦が可能な仕組みも用意されており、発話内容に応じたマッチング提案をその場で行うことができます。 

3. 検証結果・効果 

このシステムは、複数回にわたるイベントやワークショップで実際に活用され、さまざまなテーマに応じた実証提案が生成されました。特に2024年2月に実施された自治体間の連携をテーマとしたシティプロモーションのワークショップでは、参加自治体の情報を事前に収集し、AIが具体的な連携案(例:合同マルシェの開催、特産品の共同出展など)を提示しました。 

このような検証を数多く重ねる中で、技術的な改善を加えながらマッチング精度を高める工夫を導入しました。音声情報を整理する際には生成AIの正確性を重視し、マッチングを推定する際には創造性を高める調整が必要であることが分かりました。さらに、これらを組み合わせることで、より高いマッチング精度が得られることが確認された。 

4. 今後の展望・課題 

今後は、このシステムをさまざまな分野・地域に展開していくことが検討されています。特に、地域の社会課題の当事者とAI研究者、あるいは行政と民間企業の連携支援といった文脈で活用が期待されています。来年度も引き続き、Hatch Meets UP!などのネットワーキングイベントや、地域課題の現場での実証に活用していく予定です。また、AIによる提案の正確性や納得性をどう高めるか、音声からの情報抽出の精度、さらには参加者の信頼感をどう得ていくかといった点は、今後の課題として残されています。 

5. 実証事業者について

事業者:国立大学法人名古屋工業大学
大学長:小畑 誠
住所:〒466-8555 名古屋市昭和区御器所町
URL:https://www.nitech.ac.jp/

事業者:ハイラブル株式会社
代表者:水本武志
住所:〒170-0005 東京都豊島区南大塚二丁目26番12号 鈴音ビル2階 203号室
URL:https://www.hylable.com/about/

なお、この白松研究室の技術はNEDO (JPNP20006) の支援を受けて開発されました。