【企業インタビュー】案件があれば全部トライしたほうがいい。スピード・岩木勇一郎さんが考える、社会課題への取り組み方とは?

愛知県瀬戸市に本社を置く「株式会社スピード(以下、スピード)」は、ゲーム・アニメ・映画などのCG映像制作からVR、AR、メタバース、ライブ・イベントの企画・演出まで幅広く手掛けるクリエイティブカンパニーです。

2021年のHatch Technology NAGOYA(以下、HTN)や同年のアーバンイノベーション大垣の課題など、自治体の課題解決に取り組んできました。今回は、HTNで上下水道局建設工事事務所と取り組んだ実証の内容を中心に、株式会社スピード 代表取締役 岩木さんに、実証事業への取り組み方についてお伺いしました。

(インタビュー/吉永隆之 文/狩野哲也)

スピードは、名古屋市上下水道局建設工事事務所の抱える「コロナ禍でも臨場感あふれる上下水道工事地元見学会を実施したい!」課題を解決すべく、2022年1月11日に名古屋市上下水道局とHTNの実証実験として「コォジィ君と行く工事現場XR見学会」を開催しました。

上下水道工事への理解を深める目的で毎年行っていた地元見学会がコロナ禍により実施出来なくなったため、XR(クロス・リアリティ)技術を使って、工事現場に足を運ぶことなく、現場の様子を疑似的に体験してもらおうという試みです。

XR見学に参加したのは工事現場の近くに住む地元代表者6名です。参加者はヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)を装着し、工事現場の映像を視聴します。

動画が始まるときょろきょろとあたりを見渡すような動きに。工事用エレベーターに乗って地下へと降りていく場面では、足元に広がる穴の深さに思わず「こわい…」と声を漏らす方もいました。現地で実際に真下を見るのはかなり勇気がいるので、高いところが苦手な方にはお勧めできませんが、XRなら臨場感たっぷりのスリルを体験してもらえます。

(参考リンク)

実証の様子はこちらのレポートにまとめています。合わせてご覧ください。

スピード 岩木勇一郎さん

岩木さん流、クリエイターとしての協働の捉え方

スピードが応募した背景にはどういった理由があったのでしょうか。

「HTNの取り組み自体が面白いし、社会課題を可視化して問題定義して解決にもっていくところがいいなと思って参加しました。極端に言えば、案件があれば全部トライしたほうがいいと思っています。弊社が選ばれるかどうかは置いておいて、考え続けることが大事。いろんな社会課題があると思うので、どこに自分たちが役立てるか考えることは、スピードの事業開発上においても大事です。そこに課題があるんだなと気づかされることが多い。それが面白いし、私たちの創作の原動力になっていますね。」

自治体との協働は、苦労はないのでしょうか。

「『着目点はそこなんだ!』と毎回新鮮です。協働相手の発言に『えっ?』と思ったとしても、僕たちのほうが世の中的には常にマイノリティーなんだとよくスタッフに伝えています。『どちらが標準か』と考えたときに『自分たちのほうが変わり者なんだ』という自覚を常に持つように伝えています。」

実はエンターテイメント業界に入る前に、少しだけ土木系の仕事をしていたことがあり、今回は、そうした過去の経験も活きたそうです。

岩木さんは「HTN事務局として入っているUrban Innovation JAPANのポジショニングは、とても意義がある」と言います。

「プロジェクトマネジメントの部分が日本では軽視されがちですが、何事もマネジメント次第で、仕事ってごろっと変わってしまうし、そこが鍵だと思っています。ある意味、見えにくい部分で、そこをマネジメントしてもらっているのでUIJと取り組む現場では常に感謝しています。普段であれば自分がやっていることなので。コミュニケーションの部分でも、気遣っていただいているのをすごく感じます。これは余談ですが、バンドの演出とかしているとチーフマネージメントがいかに大事かがわかります。4〜5人のバンドメンバーが同じ方向を向いて創作するなんて難易度が高い。日本はマネジメントの価値をもっとあげたほうがいい。」

スピードでは「プロマネ トラのあな」というマネジメント人材育成の取組も行っているそうです。

スタッフも楽しんで開発していました

「下水道工事現場にXR動画を使って見学に行くプログラムで意識したのは、照明と没入感でした。もともと工事用に明かりはあるけれど、ちょっと360度で映すには暗すぎるのです。映像が粗いとなかなか臨場感や没入感が得られないので、特に明るさにはこだわっています。工事現場に本格的な照明を持ち込んだことがポイントです。」

「エレベーターが降りるシーンで『こわっ!』と言って、そこで一呼吸置く方もいらっしゃいました。没入感が得られている姿が見られるのはうれしいですね。また、長年、酔わないVRを研究してきていて、初めてのVR体験の方にも、違和感なく楽しんでいただけるようこだわっています。」

ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)で視聴する際、コントローラーを使わず目線で簡単操作できることも特徴の一つです。クイズで工事現場の知識を得ながら進行しますが、最後のクイズに正解するとご褒美に…。体験してのお楽しみです。

また、VRが初めての方に世界観やルールを理解してもらうために、シナリオ、キャラクターの登場の仕方、話すスピード、音の流れるタイミングなど随所に工夫が散りばめられています。

「サザエさんでタラちゃんが登場したときに足音が流れるように、先に音を出して誰かが近づいてきたぞ、と感じてもらうなど、初めてゴーグルを体験する人が楽しめるように工夫しています。」

また、360度動画なので、映像データが重くなってスムーズな動きにならないと没入感も得られないため、ビットレート(画質や音質)の最適値を探して何十時間かけて、映像を書き出し、チェックを繰り返したそうです。

こうして完成したのが「コォジィ君と行く工事現場XR見学」です。

https://speedinc-jp.com/kozyekun/

体験した市民の方や市役所関係者からも大変好評で、先の見学会のあとパソコン、スマートフォンでも楽しめる形で公開し、広く地元の方々に体験していただきました。また、2022年6月5日(日)に開催された第64回水道週間行事「なごや水フェスタ」など、名古屋市上下水道局のPRに広く活用されています。

「いつも頭にあるのは、映画『ベスト・キッド』のように、掃除していたら空手が強くなっていたみたいに、エンターテインメントを通じて自然と学べるような仕掛けです。一見遠いようですが、上下水道工事現場見学もエンターテインメントになると思って、スタッフも楽しんで開発していました。」

スピードの今後の展開

岩木さんは、エンタメやビジネス、教育などのスピードの3つの柱の中で、メタバースやNFTなどの分野も企画制作が進んでいて、拡大していきたいと考えているそうです。

2011年に瀬戸市でICT教育講座の「Seto CG Kid’s Program(こどものモノづくり体験)」は昨年第11回を迎え、声優の関智一さんなど豪華な講師陣とともにメタバースを楽しむ講座が開催されるなど、現在も続く人気講座になっています。

「いろんな社会課題がある中で、どこに自分たちが役立てるか考えることは社会人としても良い、絶対にプライベートにも役立つ」と話していらした言葉が印象的でした。名古屋市民ではない方もぜひ、これからの社会を考えるヒントが詰まっていると思うので「コォジィ君と行く工事現場XR見学」の動画サイトを訪れてみてください。

「コォジィ君と行く工事現場XR見学」ウェブサイト

・視聴終了後、WEB 上でのアンケートにご協力をお願いします。

【PCのアクセス先】

https://speedinc-jp.com/kozyekun

【スマートフォン、タブレットのアクセス先】

(こちらの二次元コードからサイトにアクセス)

(XRコンテンツの再生にはYouTubeアプリが必要)

株式会社スピード ウェブサイト

https://speedinc-jp.com/

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